AEでBoujouのレンズディストーション生成する

レンズ補正の手順

img_boujou

1)収録素材のレンズディストーションを補正してレンズ歪みのない画像を作成する。
2)補正した素材でトラッキング作業する
3)トラックデータと補正画像をAfter Effctsなどのコンポジットアプリケーションにエクスポートする
4)歪みを補正した画像で合成作業を行う
5)合成結果をBoujouにインポートする
6)レンズ歪みを付加して完成する

上記6点がマッチムーブの基本です。
Boujou5では、1)のレンズディストーションを補正してくれる機能がありますが、これが正常に機能していません(2010-3-20現在)さらに、悪いことに6)の合成結果にレンズ歪みを付加する機能もバグがあり動作しません。クレッセントのサポートサイトでも「重大」と言及するほど致命的なバグです。これはマッチムーブをする上で不可欠な要素であるにも関わらず機能していないということで、私は致命的だと思っています。

AEで解決する

しかし、そんな致命的なバグであっても、After Effectsを使えば、作業工程4)~6)を一気に完遂することが出来ます。
サンプルはBoujouのTutorial3にあるチャペルの素材を使用します。この素材は、日本国内で仕事をされている方にはあまりなじみのないPAL素材です。しかし、考え方さえマスターすれば、NTSCでも、HDTVでもパラメーターを変えるだけ対応できます。これから説明する内容はBoujouの基本操作を理解している前提で話を進めます。

工程1)~3)

AEのプロジェクトに歪みのある元素材Tutorial3_chapelをインポートします。
次に歪み補正したTutorial3_chapel_correctedをインポートします。もちろん、この素材はBoujouのAssess Lens Distortion (manual)で歪み補正処理したものです。
ここで歪み補正した画像は、糸巻き型の歪みを持っています。素材によっては、逆のたる型になる場合もあります。
次に、この素材をExport Sequenceで書き出します。書き出した素材は、Tutorial3_chapel_correctedと名前をつけて連番ファイルにします。解像度は834×668です。

工程4)~6)

工程4)からはAfter Effectsでの作業になります。最初にTutorial3_chapelの連番ファイルをインポートします。この素材はPALの連番なので、解像度は720×576であることを確認します。

次にレンズディストーションを補正したTutorial3_chapel_correctedは834×668であることも確認しておきましょう。

ここで重要なのは、補正前の素材と補正後の素材でピクセル縦横比が異なっていることです。AEで素材を読み込むと画像解像度の数値を見て、この素材はPALなのかNTSCなのか、さらにはHDTV1080なのかHDTV720なのか判断してくれます。Boujou内部でレンズ歪みを解析するときに、一旦、放送方式特有のアスペクト比の違いを正方形ピクセルに変更し、さらに歪みの度合いを計算して、たる型や糸巻き型の歪みを補正しているものだと思いますが、これが話をややこしくしている原因でもあります。
ちなみにフレームレートが本来ならば25フレームになると思いますが、なぜか30フレームになっています。これは、AEの環境設定>読み込み設定でシーケンスフッテージを30フレーム/秒に設定してあるためです。読み込んだ素材は連番ファイルになっているため、それ自身でフレームレートがいくつであるとかの情報は持っていません。あくまでもAE側の設定で便宜的につけているもので、作業に支障はありません。しかし、レンダリングしてムービーファイルを書き出すときにはPALのフレームレートに設定する必要があることは頭に入れて置いてください。

補正済みの素材でコンポジションを作成

では、歪み補正したTutorial3_chapel_correctedを使ってコンポジションを作成しましょう。
この素材の解像度は、834×668です。
ここで注意するのは、ピクセル縦横比です。Tutorial3_chapel_corrected素材を「新規コンポジションを作成」ボタンにドラッグすると834×668のコンポジションが作成されます。この時のピクセル縦横比は正方形ピクセルになっているはずです。 これを右図の赤矢印の通りD1/DV PAL(1.07)のピクセル縦横比に変更しましょう。
その他は変更しません。

PALの縦横比に変更すると右図のように横方向が圧縮されて画面の左右に透明ピクセルが発生します。

トランスフォーム>スケールのXパラメータのみに107と入力してぴったりおさめます。 (スケールのロックは、解除しておくこと)

次に、歪みのある元素材Tutorial3_chapelを歪み補正したTutorial3_chapel_correctedの上のレイヤーにおきます。

コンポジションモニターに定規を表示させ、元素材の外形に合わせてX軸とY軸それぞれにガイドを引きます。
描画モードをスクリーンにして、歪み補正した下のレイヤーが見えるようにする。(右図はスクリーン適用前です)
ここで注意するのは、元素材のレイヤー1は、リファレンスとしておいているだけなので、間違って動かさないようにコンポジションでロックしておくこと。

歪み補正したTutorial3_chapel_corrected(ここではレイヤー2になります)にレンズ補正エフェクトを適用します。
視界パラメーターを操作し、元素材とぴったり合致するように調整します。数値的には49あたりがこのカットでの最適値と思われます。

現在のコンポジションは、Boujouでレンズ補正を加えて書き出した素材なので、画像解像度はまだ834×668のままです。これを正規のPALの解像度に戻すために、新たなコンポジションを作成しましょう。

このコンポジションはreDistPALと名付けて解像度を変更したものだと分かるようにしておきます。(右図)
reDistPALコンポジションに、先で作成したtutrial3_chapel_cottrcted.000のコンポジションをのせると完全なPAL画像になります(下図)

これをレンダリングして書き出せば完了です。